水中を飛ぶ

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【感想】りゅうおうのおしごと! 6巻

 

りゅうおうのおしごと! 6 (GA文庫)

りゅうおうのおしごと! 6 (GA文庫)

 

 読んだ。

 

 

全巻で竜王防衛をはたした主人公は今回は目立たず、その周りが主軸の話でした。

玉将」捌きの巨匠 vs 「帝位」将棋界を終わらせた戦犯

今回から登場した「帝位」於鬼頭さんは、作中で初めてコンピューターに負けた最初のプロ棋士。敗北後、彼は研究を将棋ソフトで行い、まるでコンピューターが考えているかのように将棋を指す。今回の対局では終盤の読みという部分で生石さんがミスを犯し頓死。あたかも人間対コンピュータの戦いのような形で決着。

コンピューターに人間は勝てないのか。将棋に限らず、変わりゆく環境の中で人間は生きていく必要があり、その中で適応できないものは淘汰される。それでも変われないものがあるのなら、不断の努力でそれを変えずに、通じるように鍛えていく必要がある。控える玉将防衛線で生石さんはそれを見せてくれるのか。

 

将棋の神と駒に込められた魂

「私は強くなりたいの。才能や実力は他人からプレゼントしてもらうものじゃない。だから何もいらない」

読んでてギクリ。これを言い切るのは恐ろしい。自分の実力と努力に絶対の自信がなければ言えない。特に努力。自分が全力を尽くしていると言い切れるのは、私にはできない。どうしてもさぼってしまうこともあるからね。

そんな彼女が、それでも師匠から将棋の駒をもらって泣いたのは、そこに込められた周りの人の思いが伝わったから。彼女にもう一度父親と将棋を指してほしい、その思いで働きかけてくれた師匠と、それに呼びかけられた多くの人の動いてくれたこと、そしてそれによって駒にこもった魂を感じることができたから。この巻で一番熱いのはこのシーンだったと思います。

鉄の努力を積み重ねる彼女が一人でないことを自覚し、周りの人に敬意を払い、その教えをきちんと自分の力に変えることができたら。今後の彼女の変化を見たい。

 

女流初と最年少をかけて

椚君怖い。

環境の違い、文化の違いをビシビシと感じる。どんな分野でも、基本的には整備された道を行くことができる後発の人のほうがいろいろなことを身に着けるうえで優位なのだろうけど、特にどんどん発達するコンピューターで将棋を学んだ椚君の感覚は、それを知らない先達者から見たら完全に宇宙人。それに侵略される方としてはたまったものではなく、恐怖を感じるほかない。挿絵で示されることなく、銀子の絶望がヒシヒシと伝わってきて震えました。

今回はなんとか勝ちを拾いましたが、それも「相手のほうが読み切っていたから」という皮肉なもの。「絶対に勝てない」という印象を植え付けられたまま、地獄の三段リーグに挑む……。想像するだに恐ろしい。八一と話して決意を固めた彼女の今後の戦いはどこへ向かうのか。

 

 

全体として、溜めの一巻だったと思います。今回因縁を残した戦いが、次回どのように展開するのか。期待です。